追熟

自宅近くで見つけたある本屋。
入った瞬間、なんだか…自分っぽい。
居心地がいい場所に遭遇すると、安心感が湧く。

ジョン・ケージの本に手を伸ばす。
その瞬間、17、18歳の若き頃にトリップし、彼の世界観に感じたエクスタシーを思い出した。
本をめくる度、蘇る過去の記憶。
今と重ねても大して自分は変わっていないのだな。
ただ複雑にして生きてしまったのだなっと実感する。

今日という日を特別なものにしたかった。
何かしようと意気込むのだが、体が気持ちと矛盾する。
今日という1日を ただ何もなく過ぎて欲しくなかった。
そんなある日、無性に土を触りたくなり、自宅の裏庭に出た時の出来事を綴りました。


追熟

荒れ果てた裏庭に手を入れた
不思議と重力が土に吸い込まれていく

ミミズが大量にうごめいていて
土地の動きが見て取れる

草をむしり、枝を切り、土を耕す

自分の手が敏感になっていく
枝の棘にビクつき、服に付いた土埃にくすぶり、日光の暖かみに恍惚とする…
まるで両手が別の生き物になったようだ

身体が感覚を呼吸している
心は敏感に反応する

なにもない場所に恐怖を想像で埋める
そんな習慣、もうやめよう

不必要なものをずっと握りしめていたことに気づく
過去がそれに執着する

手を広げればいいだけのこと
ボロボロと、指の間からこぼれ落ちていく屑たちよ
やがて記憶と共にこ大地の奥深くへ還り…マグマに溶かされ、エネルギーの源となってくれ